今まで、自殺のサインを発見し、早期に対策を打つことが重要と説明してきました。 では実際、あなたがそのような立場にたたされたらどう対処したらいいのでしょうか?
もし、「死にたい」と告白されたら…
もし、あなたが誰かに「死にたい」と告白されたら、あなたならどうしますか?
誰だってびっくりします。ショックを受けます。そして不安になり、冷静さを失います。そこで、人は正論をはきます。「もっと強く生きよう。」・「死んで何の得があろうものか」等々・・・ これらの言葉はただしい言葉です。しかし、これらの言葉は自分の不安を和らげるための言葉で相手の不安を和らげるためのものではありません。 人は悩みがそれほどでもないときは、元気な励ましで強くなれます。しかし、自殺したいという深い悩みを抱えている人にとって、前向きな正論をぶつけられても「ああ、この人もわかってくれないのか・・・」とその場を去っていくだけです。そこに解決の道はありません。ただ明るく前向きな励ましの言葉がいつもいいとは限りません。
まずは、話を聞いてあげましょう。
一番必要なことは聴いてあげることです。死にたいなんて言われたら、人は誰でも不安に陥り、「死ぬんじゃない」とか言いたくなりますが、それでも、まずは、「どうしたの?」と話を聴きましょう。説教する前に、相手の言葉に、相手の心に耳を傾けちゃんと話を聴きましょう。 死にたいと言ってきた人の自殺を予防するためには、まずは、ともかく話を聴きくことです。
このような話を聴くことは、楽しいことではありません。話を聴く方も辛い作業となります。しかし、自殺予防のためにはそれが必要なのです。 死にたいと思うほどの苦しみ、辛さ、悲しみ、悔しさ、恨み、怒り。話さないままで死んじゃうなんて、そんなことしないで、どうか話してくださいと。 話を聴いてもらうことは、私たちが想像している以上に、自殺予防の大きな力になります。話を聴いてもらい、共感してくれることは、生きる意欲につながっていくのです。
会話をしている間は自殺できません。正論を吐いて会話を終わらせないで、ともかく会話を続けましょう。「また電話してくださいね。」・「明日また話してね」等々・・・、話を聴き、共感することで生きる意欲につながり、自殺予防につながります。また会話を続けることで自殺を先延ばしにできます。自殺を先に延ばせれば、その間に弱った心が次第に回復します。そうなれば苦しい現実が何も変わらなくても人は死のうとはしなくなります。 だから、話を聴きましょう。
自分をしっかりと守ろう
こんな暗い話を聴き続けることはとても辛い。だから、自分の心をしっかり守りましょう。あなたが、強さや冷静さを失ってしまっては、相手を助けることが難しくなります。なので必要以上に背負い込まず、あなたの出来る範囲で精一杯やりましょう。 自分を守るためにも自分を助けてくれる人も探しましょう。自殺の話は相手の信頼を裏切ってはいけませんが、自分ひとりで抱え込むにはとても大きすぎる話です。職場や、学校、家庭、信頼できる他の人と、その問題を共有しましょう。
カウンセリング的面接の目標を持とう
カウンセリング的面接の目標を持って相手と接するようにしましょう。カウンセリング的面接とは、ただ、相手の話を聴くだけではありません。カウンセリングの人間観は、「人は自ら良くなる力を持っている」という人間観です。
人は、心の健康を取り戻せば(自己一致できれば)、必ず自ら生きる意欲を取り戻すことができるという信念に基づいています。だから、ただ人の話を聞いて、その結果、その人がどうなろうともその人の自由だとは考えません。相談者の自由と自己決定は確かに重んじますけれでも、その人が何をしても勝手だと考えているわけではありません。心が弱り、生きる意欲を失っている人、やけになったり、いじけたりして、自己決定力が一時的に弱っている人々に、話を聴くことで共に寄り添い、側面からサポートし、その人が心の健康を取り戻し、真の自己決定ができるようになることが、カウンセリングの目標なのです。
きっとそうなることができると信じているからこそ、じっくり、人の話を聴くことができるようになります。 そして、自殺は、冷静な自己決定の結果による決断ではなく、心が弱り(自殺の準備状態にあり)、孤独と絶望感に押しつぶされた結果の行為ということを知るのです。
伝えたいメッセージ
あなたの大切な人を考えた時、大切な人に自殺なんかして欲しくない。でも、ただ生きているからいいというわけじゃなく、できることなら、いきいきと暮らして欲しいと誰もが願うことでしょう。
だから、心が弱っている人にこういうメッセージを伝えるのがいいと思います。
「あなたも愛されているし、あなたも一人ではないのですから」
このメッセージを伝えるとても有効な一つの方法が、お説教ではなく、カウンセリングであり、傾聴し、共感するという技法なのです。相談に乗っている時に、死にたいと思っている人の話を一生懸命聴くことに加えて、何かを語りたいとしたら、こういった言葉がいいと思います。「あなたの話を、もっと、もっと、聴きたい。」・「あなたが死んだりしたら、私はとても悲しい」
自殺予防の方法 原則と、そして、
「自殺予防の標準的な話としては、話を聴こう、共感しよう。」です。
だからといって、いつも原理原則に縛られることはありません。時と場合によっては、特別な方法が効果的なことも確かにあります。
例えば、「死ぬな、ばかやろう!」と、泣きながら殴りかかって、自殺を防止できたこともあるでしょう。基本的な原則から、かけ離れたか行動もしれません。しかし、この二人の特別な人間関係、この時の特別な状況下にあっては確かな効果が出ているのです。
「学者」の中には、一般的な原理原則だけで、個々のケースが見えなくなってしまう間違いを起こす人もいます。また、「個人」の中には、自分自身の体験を一般化しすぎて、原理原則や、他のケースを認めない人もいます。どちらも、気をつけましょう。
実際、死にたいと思っていて、そこに、生きようとする言葉、人生はすばらしいという言葉が伝えられたり、励ましを受けて、結果、死を思いとどまる人々は例外的ではなくて、たくさんいるのです。
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